Coffee Reverb 5年間の歩みとこれから
5年前のこと
バイトクビ→弟子入り→独立までなんと2ヶ月
2025年の11月で、Coffee Reverbは5周年を迎えます。
「ヒゲを剃れ」との店長命令を無視し、パン屋のバイトをクビになったのが2020年9月末。
初めて師匠の焙煎機に触れ始めたのが1週間後の10月6日。
「卒業おめでとう!」と言われたのが10月12日。

↑かわいいかわいい師匠のお子さんたち
「もうちょいいさせてくださいよ〜w」とお茶を濁して居座り続けるも、
「もう十分できるよ!あとは自分で頑張って!」といよいよ放り出されたのが翌11月半ば。
門を叩いて2ヶ月経っていません。

↑入りたての僕に「じゃあ焙煎ヨロシク」と言ってスケボーで遊びに行く師匠。
思えば、修行5日ほどで店の焙煎はほぼ全て任せてもらってました。
…というか、そもそも焙煎のことなんて「予熱が何度になったら投入して、何度になったら火力あげて、中煎りならこれくらい、深煎りならこれくらいで出しといて」
これくらいしか教わってないんですよね。
しかし超テキトーな師匠と、ほっといても自分で考えて色々試して試行錯誤を重ねていく僕の相性は抜群だったのです。
全部自分の好きなようにやらせてもらえて、チェックもなかったので(笑)

やっぱり師匠の焼き姿はかっこよかったなあ。
自分のお店を持つと、この師匠の凄さがよく分かります。
「うちは焙煎機のボタンの位置覚えたら一人前やけん」なんて僕には絶対言えない。
長くなりましたが、そんなこんなで半強制的に(?)自家焙煎コーヒー店デビューとなったのです。
10年以上も修行してやっと独立する方も多い中、修行期間は2ヶ月足らず。
師匠のお弟子さんの中でも最速だそう。
アマチュア時代にコーヒーを飲みまくり味覚経験を積み、自分が出したい理想の味を既に持っていたのが大きかったようです。

↑クビになったパン屋で初めて制服に袖を通した時の写真。店主の鉄板ネタ。
第一の転換期
理想の味と書きましたが、それは、
産地や品種などの特徴がしっかり感じられて、クリーンでコクも深みも余韻も全部ほしい。
そして大前提になるのは、飲み物として美味しいこと。
今でもこの部分は大きくは変わっていません。
しかし当時の僕には、スペシャルティコーヒー以外を認めようとしない姿勢がどこかにあったように思います。

独立して2年ほど経った頃でしょうか。
スペシャルティではない、それなりの品質の豆を、とんでもない美味に焼き上げる達人の噂を聞き、東北へ電話注文したのです。
そして届いた豆を飲みました。
愕然として、膝から崩れ落ちたのを覚えています。
綺麗なだけではない、清濁併せ呑むようなコーヒーの表現。
スペシャルティじゃなくたって、美味いコーヒーはある。そう痛感しました。
Coffee Reverbの内なる転換期です。
ネルとの出会い
そして、今年5月に第二の転換期を迎えます。
そう、ネルドリップとの出会い。
カップというコーヒーの最終的な表現に、どこまでコーヒー豆のポテンシャルをどこまで引き出せるか。これが抽出の世界です。

今まではペーパードリップで、ドリッパーや淹れ方を様々試し、
「これならうちの豆のポテンシャルを十分引き出せる」
というレシピを構築したところで、ペーパードリップにある種の限界を感じていたような気がします。
そんなタイミングと重なったのが、今年5月の「いま会えるレジェンドにはいま会っておこう」
というテーマの東京コーヒー旅でした。

ここで出会った業界の大先輩から魔法の言葉を授かります。
「君くらいちゃんと豆を焼けるなら、ネルで無限にコーヒーを表現できるよ」
一気に火がついた瞬間です。自分とこの豆を持っていって本当に良かった。
思えば、第一の転換期のきっかけになったお店も
ネルドリップのお店でした。
ネルが焙煎に与えた影響
ネルは単なる抽出器具ではなく、自分の焙煎をさらに引き上げてくれる存在になりました。
豆の良いところも課題も、より細かく見せてくれるのです。
めちゃくちゃ良いスピーカーを買ったら、好きな曲がもっと良く、もっと細かいところまで聞こえる、みたいなのと同じ理屈です。

これによって、焙煎の狙いもより細かく設定でき、良いところをもっと出せるようになりました。
遠方でなかなか来れず、オンラインで豆をご購入いただいている方にも
しっかりとネルの恩恵を届け続けられます。
そして続・東京ネルの旅へ

現時点でのベストの形
ネルとの出会いから4ヶ月。自分なりに試行錯誤を重ねてきました。
使用するネルの素材や形、ドリップポット、湯温から挽き目から注ぎ方まで…
今の環境、今できる中では、自分の豆の良さを限界まで引き出せると言えるところまで来ました。
ただし具体的なところは何も教わってないため、ほぼ完全なオリジナルです。
そこで改めて先輩方はどうやっているのか気になるところも増え、再びネルの旅に。

続・ネルの旅での学び
今回回った3軒全て、どこも濃かったです。
どこのマスターも沢山のヒントを与えてくれました。
美味しいコーヒーをつくる人はみんな人柄が素晴らしいのです。

「ここに取り組んで行けばもっと良くなるはずだ」
「やっぱり尊敬する先輩たちはさすがの腕だぜ!」
そんな期待通りの収穫を得られた一方で、意外な発見もありました。
「この部分に関しては自分もだいぶ健闘している」
「一流どころと比べても全然悪い勝負じゃない」
そう思える部分があったのは、自信になりました。
これからのCoffee Reverb
新しいネルの店
今すぐの話ではありませんが、ネルドリップのお店を思案中です。
「じゃあ今の佐礼谷のスタンドでネルをやればいいじゃないか」と思う人もいるでしょう。
やっぱりちょっと違うんですよね。
椅子に腰を下ろして、カップを手で持ち、長い余韻に向き合う時間。
佐礼谷スタンドとは時間の流れ方が違います。どちらが良いとかではなく。
カウンターの形も熟考を重ねています。
お客さん同士の会話が生まれ、ネルドリップの一杯を通して少し特別な時間が流れる。
全国のコーヒーファンやネル愛好家に来てもらえる、そんな店にします。
ああ、楽しみ。

AIのあいちゃんに相談したら画像生成してくれました。まだまだジャストアイデアですが。
オンラインショップでのつながり
ネルに出会ったことで、オンラインショップで扱う豆の焙煎にも変化が始まっています。
ペーパーで淹れても、ネルで淹れても美味しい。
欲張りかもしれませんが、ネルで淹れないと美味しくない、そんな豆に興味はありません。
全国のコーヒーファンに楽しんでもらいたいという想いは創業から変わらず。
オンラインショップのおかげでそれが可能になっているので、これからもどんどん伸ばしていきます。
佐礼谷コーヒースタンドのこれから

もちろん、佐礼谷コーヒースタンドはこれからも続けていくつもりです。
季節の花々に囲まれ、ヤギと一緒にコーヒーを楽しむあの空間は、それだけで価値があります。
僕とティピカに会いに多くの方がいらしてくれて、とても満たされているのです。

まとめ
立ち上げから今までの色んな出会いやヤギのことなど書くつもりでしたが、ネルづくしになってしまいました。
5年目で出会ったネル。
ただのコーヒー道具ではなく、それは道でもあります。
6年目から歩むネルの道。
オンラインも実店舗も、ネルでますますパワーアップさせていきますので
これからもCoffee Reverbをよろしくお願いします。