今さら高級コーヒーハンドミル:KINU M47を選んだ理由とコマンダンテ考
コーヒー豆に、新たな切り口を
コーヒー焙煎業、6年目に入りました。
人の成長とは、直線か?曲線か?
少し行っては壁にぶつかり、乗り越えてはまた進み、そしてまた壁…
階段のようなものでしょうか。
ずっと先を行く偉大な先人たちも、同じように階段を上がり続けているように見えます。
そんな焙煎の階段を、僕も楽しく上がり続けているわけですが
今は、「さーてここから上に行くにはどうすればいいかな…」というタイミング。

焙煎のチェック環境を変えてみよう
コーヒー豆に切り口を与える道具。それがミル。
「それならば、うちの豆を違う切り口で見てみよう」
と、思い立ちました。新しいミルを導入してみようってことですね。
使うミルによって、コーヒーの味はべらぼうに変わる。
というのは、ある程度以上コーヒー沼に浸かった人しか知らないかもしれませんね。
包丁、ピーラー、スライサー、おろし金…
食品を細かくする道具はたくさんありますが、どれも全く別物ですね。
コーヒーミルも一緒です。器具の中では一番大事と言っていい。
そこで、
「今の自分の豆を、さらなる高解像力で切ってくれるコーヒーミル」
を求め、丸一日かけてリサーチしてみました。
本記事は、数年間視界の端っこでしか見てこなかった高級ハンドミルを
この機会にできる限りガッツリ掘って、備忘録がてら自分なりにアウトプットしてみる趣旨です。
間違いや誤解もあるかと思いますので、その際は優しくご指導くださると幸いです。
開業以来、大エースであり続けたフジローヤルのみるっこに取って代わる存在は現れるのか!?
それとも「一周回って、みるっこ」か!?

「なんといってもコマンダンテ」な風潮
高級ハンドミルの代名詞であり、最高価格帯に位置するのがコマンダンテ。
ブームの口火を切った存在でありながら、後続の全てを寄せ付けないクオリティ。
おそらくそんな共通理解になっているでしょうか。
では、コマンダンテが押しも押されもせぬそのポジションを勝ち取ったか
僕なりの解釈を記します。あらかじめ弁解しておきますが、僕はこの数年スペシャルティ界隈を横目でしか見ていません。
トレンド把握のため年間数百グラム買って飲む程度ですので、ご意見は優しめにお願いします。

時代にフィットしたコマンダンテ
コマンダンテが長年支持されてきたのは、単純な性能の良さだけでは語れないと思っています。
もっといえば、
浅煎りスペシャルティの価値基準と、コマンダンテの設計思想が完全に噛み合っていたから
と僕は見ています。
3,4年くらい前まででしょうか。スペシャルティの主役は「酸を中心としたキャラクター」でした。
※当店はその様子を外から見ていた存在です。
フレーバーのキャラクターが立っているコーヒーこそ至高で、
生焼け感や青みが残っていても目を瞑るような時代でした。
それ故「酸っぱいコーヒー」に辟易してる人々だらけだった記憶が…
その時代においてコマンダンテは、
- 極端に狭い粒度分布
- 少ない微粉
- 抽出レンジの狭さ
- トップノート付近の情報が最もクリアに立つ設計
これらが完全に当時のスペシャルティの価値基準にフィットしていたと考えられます。
出したいフレーバーに狙いを合わせて挽き目を調整することで、
綺麗なカット面からその華やかさを十分に抽出します。
そして青みやエグみなどの原因となる細かめの粉は、自ずとに粒度分布から外れる。
厚みや複雑さを捨てて良いところだけの「おすまし」を狙ったコーヒー。
つまり、“時代が求めていた味をベストな形で表現できる道具だった” と言えるのでは。

その時代ってこれからも続くの?
さて、今はそんな酸味のキャラ一辺倒の時代からだいぶ変わりました。
浅煎りのスペシャルティでも甘み、丸さ、複雑さ、余韻、全体のバランス、など
スペシャルティコーヒー以外の飲み物では当たり前になっている価値基準で
ようやく語られるようになってきたと思います。
バンドでたとえて言うならば、
ギターさえ華々しく派手なら後はどうでもいい
から
ギターはもちろん、ベースもドラムもしっかり安定
という方向にシフトし、生焼けのコーヒーもだいぶ減りました。
個人的には、大変良い流れだと思っています。
「酸っぱすぎて地獄のようだった」という経験談もあまり聞かなくなりました。
そうなると、
ギターの華やかさに全振りしたコマンダンテの抽出特性は、ベースのうねりやドラムのビートを拾いきれず、時代に振り落とされるのでは
という仮説が生じます。
ここ何年か触っていないな、コマンダンテ。答え合わせをしてみたいです。
…と言いつつ、その伏線は回収しません。
なんなら、先に上げたスペシャルティ史に、当店はかすりもしません。
当店は開業当初から、腹に響くベース〜ギターのキラキラ感
つまり、しっかりしたコクから華やかな香りまで表現することをモットーとしてきました。
そのため、コマンダンテがあまり合うとは思えません。興味はありますけどね。

KINU M47 にしました
手挽きミル探しの初期段階では、コマンダンテも候補に入っていましたが、そんな理由で落選。
(他にもコンセプトや手触り感など、理由は色々ありましたが)
結局、ドイツの歯医者さんが作ったKINU M47にしました。
第一にカップクオリティ、第二にビルドクオリティを優先した結果の選択です。
カップクオリティは挽いて飲んでみるまで分かりませんが、
ビルドクオリティ、にはネットの情報だけで結構興奮しています。
つくりの良いものが好きです
言葉を持たぬとも、佇まいで語ってくれるもの。
作動部に、一切の不快感がないこと。
クリエイティビティを極限まで高めてくれるもの。
ミルに限らず、そんなアイテムが大好きです。
カメラで言えば、ライカやローライ。
KINUと同じく、どちらもドイツ製。


友達が作ってくれた革の手帳カバーも、素材からデザイン、細部まで全てお気に入りです。

この手帳は楽しいアイデアをポンポン出してくれています。
良い道具は、使う人のレベルを一段、また一段と引き上げてくれるものです。
KINUもそうでありますように、と期待に胸を膨らませながら眠りにつきます。
KINUを選んだ詳しい理由はまた次回以降。まさかこんなに冗長になるとは。
やめられねえぜ!!コーヒー探求の旅!!!
こんなコーヒー豆焼いてます
おトクなはじめてセットもあります

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